慶應義塾大学理工学部 情報工学科

ネットワーク系研究室 修士1年 Hさん

入った理由

小さい時から,機械というよりはコンピューターが好きでした.家が結構パソコンとかそういうのが多くある家で,幼稚園生の時に初めてPCがやって来ました.取引先から貰ったとかいう超古いMacでしたけれども.小さいころの僕には,コンピューターを触っていると,少し大人になれたような気がしました.それがコンピュータとの出会いだと思います.
父の影響も大きかったと思います.新しいもの好きの父と一緒に家電量販店に行くのが最高に楽しかった.当時カメラはフィルムからデジタルへ,音楽もMDからMP3に変わっていき,一気にデジタル化が進んでいく時代でした.またインターネットの普及によって,メール,ウェブブラウジングと言ったものが家にもやって来た時代でした.コンピュータが創りだす世界は,とてもワクワクするように見えました.
母は僕を医者にさせたかったようです.医学部を目指す連中がやたらと多い高校に入学しました.最初は僕も将来の夢は医者になること,と思って高校生活をしていました.しかしある時,父親に「お前コンピュータが好きなんだから,その道行けばいい」とか言われたのがきっかけで情報工学を目指すようになりました.今思えば医者を目指して多浪するよりかは,現実的なところに落とし込ませようという策略だったと思います(笑)そんな謀らいにもかかわらず結局僕は浪人しました(笑)
慶應に入ろうと思った理由は当時憧れていた会社の出身者が慶應卒が多いっていうことに気づいたからでもあります.元その会社の人が書いた本がすごく印象的で,その人も慶應卒でした.後からわかったことですが,今の研究室の先生の同級生でした.縁深いものですね!

1年生

浪人してたので,ひとしお大学に入れたのは嬉しかったです.あと一人暮らしも始まり,いろいろ生活環境が一変して慣れていくのが大変でした.情報工学科に入る為に学門5から入学しましたが,1年生の時は学門にかかわらず幅広く勉強します.むしろ情報工学的な話は全くないと思ったぐらいです.受験生時代から数学がめっぽうニガテだったので,正直大学の数学は大変でした.あと,想い出があるのは化学ですね… 期末考査の前日に先輩に連れまわされ,全然テスト勉強できてませんでした.「再履だぁあああ」って午前1時に大学のグラウンドで叫んでました.そのあと過去問20年分といて無事再履回避しました(笑)
また,サークルに入りました.中学からやってきた吹奏楽のサークルに入って,今までやったことのないような環境でサークルの練習をしました.環境の変化についていけずに,何度か辞めようかと思ったり,2週間に1回実家に帰省したりとかしてました.徐々に慣れてくると,サークル活動が学生生活の中心になっていきました.夜遅くまで先輩と遊んでいて,大学も休みがちみたいな生活が続いていました.

2年生

2年生になると,いよいよ学科も分かれて本格的に情報工学の勉強が始まりました.といっても2年生で勉強するのは基本中の基本で,例えばフーリエ変換を勉強して実際に数式で展開できるかとか,与えられた論理式から電気回路引くとか,回路方程式解くとか,今から考えれば古典の勉強をしているような感じです(笑)当時は何がなんだかさっぱりわからなくてとにかくがむしゃらでした.成績は最悪でしたが…(笑)初めてプログラミング(C言語)を習いました.最初全くわからなくて,隣の席の人に教えてもらいました.(ちなみにその彼は今の研究室の同期です)最初のうちはなんとかついていけましたが,情報工学科あるあるですけど,ポインタがしんどかったです.プログラミングダメかも,って結構気落ちしました.今後この学科でやっていけるのか不安でした.
課外活動では,先輩になってしまって余計どっぷりサークル漬けでした.多分ハマりやすい体質何だと思います.バイトも目一杯入ってしまい,どんどん授業に割く時間がなくなっていくという感じでしたね…

3年生

3年生になると情報工学の内容もより実践的に近づいてくる感じがあります.2年生まではほぼ実質必修なのですが,3年生からは興味のある講義を取るというスタイルに変わっていきました.僕は特に好きな分野とかなかったので,講義の設置の曜日とか時限で選んでました.印象的な講義が情報工学実験で,1,2年生の時の実験と違って,ひたすら情報工学の実験なんですね.その中でもデジタル伝送実験が印象に残っていて,正直言って全実験の中で一番意味不明だったんですけど,ディスカッションの時間がとても楽しい感じだったのを覚えています.このディスカッションではみんなで意見を出し合って,課題に取り組んでいくのですが,思いつきが案外いい案だったりしたりします.授業で展開される受動的な感じは苦手で成績も良くないんですけど,この実験では自分から考えて発言していくという能動的プロセスがとても楽しかった想い出があります.余談ですけどこの実験に感化されて(騙されて)金子研究室に入ってしまいました.あと大学院に入った後にはこの実験のTAもやりました.
課外活動では,この頃にはサークルの幹部になっていて,演奏会を盛り上げるには,とか団体を運営するには,みたいなことをずっとやってました.最終的には36年の歴史の中で2番目に多いお客さんを動員することができ,また同期との想い出がとても詰まった1年間になりました.
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4年生

3年生でやった実験に騙されて,金子研究室に入りました.正直なんの研究室かよくわかっていなくて,入ってみたら,インターネットの研究室だったのかよ!みたいな感じでした.なのでこれといってやりたいテーマがあったとかそういうわけでも無くて大人の事情でどうしても人員を割り当てなければならない共同研究をやることになりました.しかもテーマが「パケットがルータやL2スイッチを通過する時間を計測する」とかいう超地味な研究テーマで,この話をすると研究室の同期にすごくバカにされました(笑)ただ,その一方でルータとかスイッチを触る機会が増えていき,今まで「Wifi繋げば適当にインターネットに繋がる」っていう感覚が,「どうしてインターネットに繋がるのか」というのがL1(物理層のこと)からL4(トランスポート層のこと)まで体系的に理解できるようになりました.するとすごくインターネットってすごいなぁ!って思えるようになって,どんどんインターネットへの興味が湧いてきました.あと,プログラミングの能力が人よりも劣っている劣等感から,絶対ネットワークの知識や運用では(研究室の中では)負けない!みたいな気持ちになりました.そんな気持ちから研究室が所属しているWIDEプロジェクトに入って,実際のネットワークオペレーションを行っています.日本を結ぶとても大きなネットワークの中心の部分を担当していて,100Gbpsのルータとか触るなど,貴重な経験を積むことができています.それだけでは飽き足りず実際にインターネットサービスを運用されている人たちの集まりであるJanogミーティングや,一部界隈で希望者殺到のInterop tokyoのSTMメンバとしても活躍してみました.そういった課外活動を通じて同世代のライバルを見つけたり,自分の研究テーマに近い人を見つけたりして,そういった刺激が自分の研究を加速させています.
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STMとして参加した時

修士に進学した理由

修士に進学した理由は色々有ります.一つは,やはり就職した時,理系の業種で就職したいという気持ちがあります.やはり最近の就職の実績からですと理系企業の理系業種で就職するには修士号が必要になってきています.また,4年生になって研究をしていくうちにインターネットのことがどんどん好きになっていき,もっと深い知識を知りたいと思うようになったのも1つの要因です.
多くの人は内部進学することができるので,就職するか大学院に入るか迷った場合は,とりあえず大学院に入れるように保険を掛けておいて,その間に就職活動をするというのも多くの人がやる手法です.僕は成績悪くて院試を受けたので,この手法は使えませんでしたが…

現在の学生生活

現在は大手企業と合同で第5世代移動通信システムにおける高精度時刻同期について研究しています.これは平たく言えばインターネットを使って,超高精度な時刻同期をするかという研究です.この技術が2020年までに実現を目指す5Gの基礎技術になります.自分の研究の成果が数年後の未来の皆さんに使ってもらえる技術になってくことが非常に楽しみで,それが研究のモチベーションになっています.
また積極的に研究室の外に出ることによって,様々な人と知り合い,そこから研究室に居るだけでは得られない経験や気づきを頂いてます.Interop STMプログラムや,Janogミーティングに参加して,最先端の知識を文字通り自分の手に身につけようとしています.
こうした課外活動や研究室で身につけたネットワーク管理のスキルを用いて,情報工学科の共有部分ネットワークやサービスを保守しています.更にWIDEプロジェクトに参加し,矢上キャンパスに設置されているネットワーク機器の管理を行っています.TAとしては,自分が感銘を受けた実験のTAとして参加し,できるだけ多くの人にわかりやすくデジタル伝送の奥の深さについて解説しています.
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デジタル伝送実験のTAとして