どこにでも情報はある
Information is everywhere
私達の身の回りの携帯電話、パソコンのような情報を主に扱うものだけでなく、家電製品、自動車、航空機、新幹線、建造物などにも豊富に情報機器が組み込まれています。航空機に限れば、そのコストの半分以上は情報機器で占められると言われています。さらにロボットのようなハードウエアの塊のように見えるものですら、情報機器の果たす役割は大きいのです。
このことは人間を一種のシステムと考えると良く分かります。人間は単なる身体機能だけでなく、神経や脳が果たす機能、すなわち、情報を検出し、送り、そして判断し、制御することによって人間らしく振舞うのです。さらに、この情報機能を使って人間同士が会話をし、協力し、優しさや愛情を持てるのです。もしもこの情報機能が失われたら、恐ろしいことになることは容易に想像できると思います。
同様に身の回りのものから情報機能を奪ったら、交通信号は止まり、エンジンの制御ができず、航空機は離陸着陸できなくなり、悲惨なことになります。このように考えると、情報機能の重要さが認識できるでしょう。
情報の力を利用するのが情報工学
Information engineering: harnessing the power of information
私達の周囲にあるありふれたものを動かしているのが情報の力なのです。情報工学とは情報の力を工学的に利用するための分野です。コンピュータ科学、メディア工学、通信工学を「情報」の観点から融合的に扱う工学分野で、情報工学科は、情報の発生、獲得、伝達、蓄積、処理、表示などにわたる学術の発展と人材の育成を通じて、社会に貢献することを目的にしています。
情報工学科の目標
Aims of the Department of Information and Computer Science
20世紀には、電力や鉄道といった、多くの人々が共通に利用するために集中して管理する技術の発展が先行し、その後、自動車が代表する個人が自由に利用できかつ管理する技術が続き、後半になって個人を時間的、場所的な束縛から解放する情報を扱う技術が発展しました。さらに21世紀になってからは、情報は人だけでなく、ロボットのような知的機械から、普段の生活にありふれた物までも対象とするようになりました。
情報を有機的に効率よく交換させるための通信の技術とその未来を正しく理解し、情報を把握して人間の役に立つように処理する画像 ・ 音声およびコンピュータ技術をしっかり身につけた、世界をリードする先端技術者を養成するのが情報工学科の使命です。
情報工学科の歴史
History of the Department of Information and Computer Science
1996年度、理工学部の学科改組により、情報、通信、計算機を総合的に修得し、将来のIT産業を支える人材を育成することを目的に 「情報工学科」が誕生、1997年度にはじめての2年生を受け入れ、専門教育科目をスタートさせました。1999年度の3月に一期生が卒 業しましたが、うち8割が大学院に進学したため、情報工学科の教 育を受けた学生の多くは2001年度から社会に出たことになります。
1996年度スタート時には予想もできないスピードでIT産業は発達を 遂げ、現在身の回りに氾濫するIT機器のほとんど全てが、音声、画 像などのメディア技術、ネットワーク、無線などの通信技術、そし てそれらを制御する計算機の三つの要素を組み合わせの上に成り立っ ています。このうちどの知識が欠けても、これらの機器のデザイン は不可能と言っても良いです。この点で、我々の学科の創設意図は まさにずばり現在のIT 社会の発展に適合しており、これら三つを バランス良く、かつ徹底的に修得した卒業生の多くは社会から高い 評価を得て、IT産業を中心に活躍しています。
情報工学科に進学するためには
慶應義塾大学では入学する際に学門と呼ばれる5つの分野に分かれて入学し、その後2年進級時に自身の興味に基づいて学科を選択します。また、情報工学科を選択する学生のほとんどは学門B、学門Cを出身としています。
その内訳を以下の図に示します。
学問のすゝめ
- 2020年掲載: ムーアの法則が崩壊し、コンピュータアーキテクチャの多様性爆発が始まった 天野英晴 著
- 2019年掲載: プログラミング不要? 遠山元道 著
- 2018年掲載: 視点を変えて物事を見る 斎藤英雄 著
- 2017年掲載: 組込みリアルタイムシステム</u >山﨑信行 著
- 2016年掲載: ソフトウェアを "研究" するということ 河野健二 著
- 2015年掲載: 「新結合」が産む新しいスマートネットワークの世界 山中直明 著
- 2014年掲載: 気配りのできるロボット頭脳ーニューラルネットワークによるアプローチー 萩原将文 著
- 2013年掲載: 計算報道学のすゝめ 藤代一成 著
- 2010年掲載: 新しい分野を開拓し、実現できる力を!! 山中直明 著
- 2009年掲載: 匂いのデジタル制御 岡田謙一 著
- 2008年掲載: コンピュータグラフィックス 大野義夫 著
- 2006年掲載: コミュニケーションロボットとコンピュータ科学 今井倫太 著
- 2005年掲載: 個性溢れるリーダーを育てたい 笹瀬巌 著
- 2004年掲載: 可視光通信のすすめ 中川正雄 著